1. FGF-5を抑制する植物エキスの発見
FGF-5の作用を抑制することができる物質は、毛髪が退行期へ移行することを抑えるため、脱毛予防の有効成分として期待できそうです。
この研究では遺伝子工学で作成した特殊な培養細胞を使って、植物エキスの探索をしました。その結果、ワレモコウエキスなど数種類の植物エキスにFGF-5活性抑制効果を見出しました。
効果を確認するために、ワレモコウエキスをFGF-5とともにマウスに皮下注射しました。FGF-5を注射すると毛包が縮小しますが、ワレモコウエキスを同時に注射すると毛包の縮小が26%抑えられました。
これにより、ワレモコウエキスのFGF-5活性抑制効果が確認されました。
2. 成長期延長効果の検討
体毛が休止期状態のマウスを除毛後、ワレモコウ抽出液を毎日塗布し、成長期が終了しそうな時期に皮膚色を観測しました。
成長期毛のメラニン色素で黒く見えていた皮膚が、エキスを使わないと白く変化して成長期が殆ど終了していたのに対して、ワレモコウエキスを塗布した皮膚では、まだ黒い色調が残っていました。
詳細に検討するため、毛包を観察しました。その結果、エキスを使わないマウスの毛包は短く、休止期毛が頻繁に見られたのに対して、ワレモコウエキスを塗布したマウスからは毛包が長い成長期毛が多数見つかりました。
このように、ワレモコウエキスには成長期を延長する効果があることがわかりました。
3. 育毛効果試験
ワレモコウエキスの育毛効果を検討するため臨床試験を実施しました。
脱毛の悩みを持つ23人の方に、ワレモコウエキスを1日2回、頭皮につけて軽くマッサージしてもらうことを4ヶ月継続してもらいました。
解析の結果、シャンプー時に抜ける抜け毛数は、2か月後に13%, 4か月後に32%減少していました。
また、抜け毛中の軟毛(短い毛)が4か月後に37%減少し、軟毛の割合が減少する傾向がありました。
このように、抜け毛評価においてもワレモコウエキスに改善効果が認められました。
次に、フォトトリコグラムという方法で毛髪の伸長速度を測定した結果、2か月後に12%、4か月後に18%毛髪が増加していました。 詳細に解析してみると、休止期の毛が2か月後に21%、4か月後に32%減少していました。つまり、その分、成長期にある毛が増加していたのです。 このように、毛髪の伸長状況において、ワレモコウエキスによる改善効果が認められました。
上記結果に本人の感想、医師の問診結果を加えて総合的に判定したところ、ワレモコウエキスの育毛効果において、使用した人の4分の3で有用性が認められました。
また、ワレモコウエキスで観察された臨床的効果にはFGF-5活性抑制効果が関与していることが推察されました。
※参考文献
「ワレモコウエキスはFGF-5活性抑制効果を持ち、成長期を延長することで脱毛を改善する」
荒瀬誠治* ほか、西日皮膚 69(1): 81-86, 2007
*徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部皮膚科学分野